商品詳細
円環状のフレームにダイヤモンドパーツが揺れる、アールデコ期にフランスで制作されたペンダントトップです。繊細な幾何学美が際立つデザインは、まさにアールデコ期の美意識を感じさせます。
「直線を中心とした幾何学的デザイン」など、直線中心のスタイルとして解説されることの多いアールデコ様式ですが、これはアールヌーボーの非対称的な曲線や、ベルエポックの優雅なガーランド装飾に対比させてのこと。正方形・三角形・長方形などがアールデコを代表する形状ではありますが、もちろん円形のジュエリーも制作されてていました。
アールデコデザインにおける円形のモチーフ・着想源として、太陽、サンバースト(太陽の光が放射状に広がる文様)がよく知られています。本ペンダントのテーマはこのサンバーストです。環状フレームの上に、放射文様が白と青の強いコントラストで表現されています。ちなみに、強いカラー・コントラストもアールデコ様式の特徴です。ダイヤモンドや地金の白を基調色とし、青(サファイア)、赤(ルビー)、黒(オニキス)、緑(エメラルド)との明確な対比が好まれました。私もアールデコジュエリーのはっとするようなコントラストが大好きです。
中央にあしらわれたダイヤモンドの揺れるモチーフにもこの時代ならではの背景があります。1920年代、ラ・ガルソンヌと呼ばれるボーイッシュなタイプの女性たちが着ていた直線的なドレスや、胸元が大きく開いたイブニングドレスが流行する中、胸元で揺れる「ラヴァリエール」と呼ばれるドロップ型ペンダントが流行の最盛期を迎えていました。アールヌーボー期には有機的な曲線を模した優美なラインでデザインされていたラヴァリエールですが、アールデコ期に入ると、対称性を持った幾何学的なスタイルへと変化し、これが当時流行していたドレスとよく合っていたのです。本ペンダントの中央にぶら下げられている揺れるダイヤモンドモチーフは、当時大人気だったラヴァリエールのデザインから着想を得たものと思われます。(『アールデコ期のファッションとジュエリー』をご参照ください)
フレーム本体はホワイトゴールド製、宝石が留められた台座の表面にはプラチナが施されています。フレームのサイド部分に入っている刻印は、イーグルヘッド(18Kゴールド)と犬の頭(プラチナ950)です。
中央の揺れるパーツに留められているダイヤモンドは、比較的わかりやすいキューレットもありますので一見するとオールドヨーロピアンカットにも見えますが、パビリオンが浅めですので、カット名はドゥミタイユ(トランジションカット)の方が妥当でしょう(『オールドヨーロピアンカットの残り香:”demi-taille”』をご参照ください)。環状フレームには12個の小さなスリーファセット・ローズカットのダイヤモンドが留められており、ホワイト系のプラチナ背景と、取り囲む三角モチーフに施されたミルグレイン装飾との相乗効果で、その大きさ以上に存在感のある輝きを放っています。チェーンを通すバチカンにも2個のダイヤモンドが留められています。
カリブレカットのサファイアもアールデコ期らしい素材です。本ペンダントに使われているのは、シンセティック(合成)サファイア。1909年頃に実用化されたベルヌーイ法により生成されたものです。合成と聞くと「え?まがいもの?」という印象を受けられるかもしれませんが、アールデコ期には頻繁に用いられた素材で、「最先端の科学が生んだ近代的な革新素材」として、肯定的な評価を受けていました。「20世紀初頭には、色の均一性と完全なクラリティ(内包物のなさ)から、むしろ天然石より優れているとさえ見なされていた」と業界誌『Jewellery Business』でも解説されています。本ペンダントのように、複数のサファイアが規則的に配置されたアールデコ期のデザインでは色の均一性が重要視されますので、色に目立つ差異の無いシンセティックサファイアが用いられるケースがとても多かったのです。
随所にアールデコらしい要素が見えるペンダントです。末永く楽しめるアンティークジュエリーとしてはもちろん、コレクションの新たな一点として、アールデコジュエリーをお探しの方にもおすすめいたします。
※商品写真のチェーンは付属しません