仏ブルターニュ地方の街Saint-Nazaireの港の古い版画

メゾンマエアスについて

À propos de Maison Mahéas

”古きものは永い時を超えて生き残り、今もなお私たちを魅了する”
-『失われた時を求めて』マルセル・プルースト


メゾンマエアス(MAISON MAHÉAS)は、日仏ハーフのオーナー夫妻が運営するアンティークジュエリーのオンラインショップです。

多くの方が少し変わったショップ名だと感じられたのではないでしょうか。
”Mahéas”はオーナーRaphaëlの母親の旧姓。聖マタイのブルターニュ語、フランス語では"Mathieu"に由来しています。非常にまれな姓ではありますが、はるか昔からフランスで使われてきました。このショップ名には、「家族のようにかけがえのないもの」という意味や、「本物(Authentique)を継承する」という想いを込めてフランスをはじめヨーロッパの歴史ある希少なアンティークを多くの日本の皆さまにお届けしたい、という気持ちが込められています。
フレンチアンティークショップ店内

お店ができるまで

メゾンマエアスには前身があります。
”日仏ハーフのオーナー”と聞いて、ピンときた方もいらっしゃるかもしれませんね。東京から新幹線で1時間余り、標高1,000mの町軽井沢で家具や雑貨を中心とするフレンチアンティークショップを営んでいました。写真はそのアンティークショップの店内です。(当時の買い付けブログ『フランス買い付け紀行』もぜひご覧ください。)
おかげ様で多くの方にご愛顧いただき毎年何度かフランスに買い付けに行くなど忙しくしていましたが、私たちの最終目標はアンティークジュエリーショップを開くこと。長年の夢を実現するためにも、その準備作業は欠かせません。中でもジュエリーの仕入れと同じく力を入れていたのは、専門知識の習得と蓄積。ジュエリーを扱うのに欠かせないジェモロジー(宝石学)の学習と、アンティークを扱うのに欠かせない歴史の学習に日夜励んでいました。仕事柄、一般的なアンティーク史についての知識を持っておりましたので、ジュエリー史への応用は楽しいものでした。
また、フレンチアンティークショップ運営中に培ったフランス人ディーラーとの人脈や、信頼のおける買い付け場所を多く知ることができたのは非常に大きな財産となっています。

フレンチアンティークショップを閉店した後に夫妻で渡仏し、コロナ禍で帰国するまでの間は本格的なアンティークジュエリーの仕入れや勉強に専念していました。中でも力を入れていたのは、より多くのアンティークジュエリーを実際に見て触ることです。現地の専門機関をはじめ、多くの恵まれた環境で知見を広げることができました。

ガラスのジュエリーボックスとアンティークミニアチュアペンダント。

私たちのアンティークジュエリー観

メゾンマエアスでは、1800年代から1900年代半ば頃までのヨーロッパのアンティーク・ヴィンテージジュエリーを取り扱っております。全て現地で直接買い付けたものです。

アンティークジュエリーの数ある魅力の一つは、大量生産ではない、手作りの一点ものでユニークであるということ。似たような既製品があふれる現代において、唯一無二のジュエリーを身に付けるのはとても魅力的で特別なことなのではないでしょうか。また、古いものを再利用することは倫理的でもあり、サステナビリティの観点からも非常に価値があります。

アンティークリング、アンティークネックレス、アンティークピアスなど、ヨーロッパの古いアクセサリーには、細部にわたる手の込んだ彫刻やエングレービング技術、そして美しい宝石の組み合わせなど、職人技の結晶ともいえる美しさがあります。
さらに、アンティークジュエリーは、新しいものにはない、独特の風合いやパティナ、経年変化などがあるため、それらがジュエリーに独特の魅力を与えているともいえるでしょう。
ヨーロッパのアンティークジュエリーは、その時代の美的感覚や流行が反映されたデザインが特徴的です。たとえば、アールヌーボー期のジュエリーは線の曲線美が特徴的で、アール・デコ時代のジュエリーは、幾何学模様が多く使われた、より抽象的なデザインが特徴的。

ルビー、パール、ゴールドのアンティークリング

その時代の文化や社会的背景が反映されたものも多くあります。皇帝や王妃の趣味はもちろんのこと、王族の喪や戦争などもジュエリーのデザインや素材に大きな影響を与えました。遺跡の発掘や遠征、スエズ運河の開通などでÉgyptomanie(エジプト趣味)のジュエリーが何度か流行したのはアンティークの世界では有名な出来事です。
他にも貴金属や宝石の新しい鉱山の発見、自然主義、ロマン主義、新古典主義などの芸術の潮流による影響もありました。皆さまご存知のピカソたちが生み出したキュビズムは、のちのちアールデコのデザインの源泉の一つとなっています。

このように、歴史的背景や美的感覚を理解することで、より深い魅力を感じることができます。
全く異なるジャンルですが、アンティークジュエリーの楽しみ方はワインのそれに共通する部分があるように感じます。マニアの方がご存知のように、ワインの背景にあるテロワールやミレジム、作り手の技術などの知識を身に付けた上でワインボトルに向かうと、味わいとはまた別な観点でより深く楽しむことができるものです。
もちろん、純粋にその一杯の味わいや香りだけに集中してシンプルに楽しむのも素晴らしいことであるのはジュエリーも同じであることを付け加えておきます。

メゾンマエアスでは、ジュエリーにまつわる歴史やその背景などを皆さまに判りやすくお伝えできるように努めます。

エッフェル塔とパリの街。セーヌ川やサクレクールも。

フランスへの想い

メゾンマエアスが扱うアンティークジュエリーの多くは、フランスのものです。
もちろん、オーナーが日仏ハーフであることや、過去にフレンチアンティークショップを営んでいたことが大きく影響しています。

とにかくフランスのスタイルが好きで、強い思い入れがあります。他の国にはない独自の美しさと優雅さがフランスの真骨頂。19世紀のロマンティックなデザインやアールヌーボー・ベルエポックの華やかな装飾、アールデコのモダンで幾何学的なデザインなど、フランス独自の様式美に心惹かれます。自己主張が強く、個性的であることが命のフランス人らしいスタイルですね。

どの国のものがより優れているということではなく、自分たちが魅力的であると感じるものをお客様にもお勧めしたいと考えております。「あまり好みではないけれど売れ筋だから仕入れておこう」的な感性で買い付けたお品は、心を込めてお届けすることが難しくなります。
また、私たちにとってフランスのアンティークジュエリーは、愛着や思い入れの深い、大切に扱っていきたい母の国の伝統でもあるのです。

今後も無理せず、自分たちの感性に合ったフランスのものを中心に扱っていくつもりです。

私たちが大切にしていること

運営にあたって私たちが大切にしていることをお伝えします

研究室内。顕微鏡など測定機器。

真正であること(Authentique)- その1

メゾンマエアスがとても大切にしているのは、正しい情報をお客様にお伝えすること。中でも素材の種類や年代に関する情報に関しては特に気を使っています。

ジュエリーの基本要素である素材(宝石、地金)については、買い付け後にまず必ず科学的な検証を行い、正確な情報をお客様にお伝えするように努めています。
パールを含む宝石類については、必ず外部の専門機関で鑑別を行い、ダブルチェック。石の種類によってはルーペや顕微鏡でインクルージョンをしっかり観察したり、簡易屈折系やチェルシーフィルターなどで検査することによりそこそこの精度で鑑別を行うことはできます。しかし、100%確実な結果を出すには、プロ仕様の屈折系、分光器や旋光計などを組み合わせて行われる鑑別が必要です。これらの高価な機器を一式揃えるのは個人や小規模企業ではまず不可能。(ダイヤモンドについては、さほど高価ではない2種類の鑑別機を使い、そこそこの精度で鑑別を行うことはできます。)ジェモロジーの知識や経験は買い付け時に大きな威力を発揮しますが、本格的な機器を駆使することなく多様な宝石群について確実な鑑別を行うことはできません。クローズドセッティングされた小ぶりのダブレットや、インクルージョンを見ることもできない極小の合成スピネルなどはそう簡単に見分けることができないものなのです。
人間の思い込みや都合の良いバイアスがかからない客観性を得られるという点でも、外部で鑑別してもらうということはとても大事なことであると考えています。
なお、メタルについては、当店にて薬品や機械を使用した科学的な判定を行っています。

マリーアントワネットの肖像画

真正であること(Authentique)- その2

現行品とは異なり、アンティークジュエリーには、素材以外にも重要な側面があります。

アンティークをアンティークたらしめるのは、制作された時代やその時代背景。メゾンマエアスでは、精度の高い時代情報をお伝えすることを心がけています。
石のマイナーな瑕疵よりも、想定通りの年代のものであるということを大事にする方も多くいらっしゃいます。「この小さな脇石の一個は合成石だけど、間違いなくナポレオン3世時代のものだからまあいいや」という感じです。もちろんあらゆる要素がパーフェクトであるべきですが、素材に一切問題が無いリプロダクションものよりはるかに良いという感覚は理解できますね。
買い付け時にディーラー、売り手が提示する年代がまゆつばであるのはよくあること。その情報を右から左に流すのではなく、当店でもしっかり時代考証を行った上でお客様にお伝えしています。様式・スタイルだけではなく、使われている素材や刻印、加工方法などなど、多くの要素を積み重ねて制作年代を特定します。
幸いオーナー夫妻はフランス語、英語で書かれた欧米のジュエリー専門書をネイティブレベルで読みこなすことが可能。信頼のおける著者が執筆した専門書を海外サイトから、もしくは買い付け時に入手し、時代考証にも有効な情報の収集を行っています。
ネット情報が玉石混交なのは日本に限らずどの国も同じではありますが、マニアや専門家が集う掲示板を見つけ、思わぬレア情報を仕入れることもあります。
また、長いアンティークショップ運営歴で培った「直感」的なものも大事にしています。知識・情報だけではなく、質感など五感でとらえる要素もおざなりにはできません。言葉で表現するのは難しいのですが、だめなものはパッと見て直ぐにわかるものなのです。

ピンクのバラの花

倫理的であること(Éthique)

エシカル、サステナブルはオーナーの永遠のテーマです。もともとアンティークの世界に足を踏み入れたのも、そのサステナブルな側面に共感したから。まだ世の中にSDGsという言葉が存在しない頃から深く傾倒し、環境分野に特化したBtoBマッチングサイトを運営していたこともあります。

メゾンマエアスでは、より質の高い商品を少しだけ、しかしよりスマートに消費することを提案いたします。アンティークジュエリーは多少値が張りますが、貴重な一点もので一生もの。再利用によって、新たに資源を消費することがなく、サステナブルであるという点で注目に値するアクセサリーです。製造過程における環境負荷も現代のものとは異なり、環境にやさしい選択肢として考慮に値すると言えるでしょう。現代の金の発掘において、児童労働も大きな問題となっています。アフリカのある2か国では、金の鉱山で働く労働者の3割から5割が子どもで、その多くが15歳未満。これはILO(国際労働機関)の調査結果です。強制労働を強いられている人もいるそうです。アンティークジュエリーの利用では、このような非倫理的な商行為を促したり手助けすることがありません。
ショップの運営においてもサステナブルであることを目指しています。いくつかの例を挙げますと、当店でご注文された場合、お客様宅への配送時に発生する二酸化炭素の排出はオフセット(相殺)されます。これはカーボンオフセットと呼ばれるもので、地球上の二酸化炭素の総量を増やさないためにその吸収や排出防止にお金を払うことにより実現するものです。オフセットは二酸化炭素1メートルトンあたりで販売されており、当店およびオンラインショップサービスの提供者とでこの費用を支払います。また、小さなことかもしれませんが、当店では発送時に納品書を同封しないのが基本です。お手数をおかけしますが、同封を希望される場合にその旨カート画面でお伝えください。

ジーンズの上に載ったアンティークブローチのついた黒い帽子

個性的であること(Unique)

アンティークジュエリーは、その独特の風合いやデザインから、他には真似のできない個性的な魅力を持っています。手作りで製作されたもの、当時の技術を駆使したものの多くは、実は現代の技術ではなかなか再現できないのです。

語りつくせないほど多くの魅力を持っているアンティークジュエリーですが、その中でも、人を惹きつけてやまないのは「一点もの」という特性。一点ものであるため、所有する人の個性やセンスが反映されるアイテムとも言えます。その個性的なアイテムを選択したというセンスの良さ、それを身に付けているだけで誰ともかぶらない個性的な存在となることができるのです。

”どの女性も同じではありません。それぞれがユニークでかけがえのないものを持っているのです。”
-フランソワ・トリュフォー(映画監督)


たとえばフランス人は自分らしさ、個性をとても大事にしていて、時によっては自己主張のあまりの強さに圧倒されるほど。ファッションについても「人と同じはイヤ」という考え方が強く、ユニークなアイテム、コーデを愛好する傾向があります。個性的なアイテムを取り入れることで他にはない独自のスタイルを確立し、自分らしさを表現しているのです。皆さまも、ご自分に合ったユニークなアイテムを選択し、自己表現を楽しんでみてはいかがでしょうか。自分だけの個性的なスタイルを確立することで、きっと自信を持って日々を過ごすことができるでしょう。

もちろん「個性的」と「奇抜」は全く異なるもの。さりげなく個性を演出しながら、周りと調和することも大事にしたいですね。メゾンマエアスでは、アンティークジュエリーと現代的な要素を組み合わせ、上品な個性を演出するスタイルを提案していきます。