商品詳細
アールデコ期にフランスで制作されたリボンモチーフのマーカサイトブローチをご紹介いたします。前面を覆うように数多く留められたマーカサイトがキラキラ輝き、まばゆいばかりの美しさです。
ジュエリーにおけるリボンモチーフの歴史は17世紀にさかのぼることができます。宮廷の宝飾師ジル・レガレによりデザインされたものが出発点。当時の有名人でもあったセヴィニェ侯爵夫人がレガレのジュエリーを多く装着したことによって、王侯貴族の間でこのモチーフが大流行しました。その後、18世紀にマリー・アントワネットがリボンのモチーフを愛用したことはよく知られていますね。19世紀中頃にはナポレオン3世の妻、ウジェニー皇后がマリー・アントワネットへの愛によりリボンブームを復活させ、1900年前後(ベルエポック期)の流行に続きます。本ブローチが制作されたアールデコ期にも、この時代らしいスタイルのものが多く作られました。リボンモチーフジュエリーの詳細に関しては、アンティーク物語「アンティークジュエリーとリボンモチーフ」をご覧ください。
すっきりしたデザインの本ブローチは、様式化された形状や直線的なデザインが主流であったアールデコらしいスタイルのものです。また、シンメトリーであるのもこの時代の特徴。洗練されたラインと左右対称に様式化されたリボンデザインが絶妙に組み合わさっています。
裏面に押印された刻印はイノシシの頭。シルバー800を示すフランスの刻印で、1838年から1962年まで使われていたものです。
ブローチ表面にはびっしりとマーカサイトが留められています。マーカサイトが18世紀中ごろからダイヤモンドの代替品として利用されていたのは有名な話ですね。ただし、その素性に関して非常に誤解・誤情報の多い素材です。誤解が生じる理由は、ジュエリーの世界における「マーカサイト」と、鉱物学的な「マーカサイト」が異なる素材であるからでしょう。ジュエリーの世界でマーカサイトと称されるのは黄鉄鉱(パイライト)なのですが、英語で"Marcasite"という名が付いている鉱物は黄鉄鉱の親戚である白鉄鉱。同じ化学組成(FeS₂)ながら結晶構造が異なります。白鉄鉱は脆く、ジュエリーに使用するには適していません。
ブローチピンのクラスプはトロンボーンタイプです。19世紀後半から使用が始まり、主に1910年代から1940年代まで多く使われました。もちろんCクラスプ同様、現在でも使われることのある留め具です。
リボンモチーフのジュエリーは数世紀にわたる長い歴史を誇ります。このブローチを手に取れば、遠い昔に思いを馳せる楽しさを感じられるでしょう。ぜひ、お手持ちのコレクションに加えてください。