商品詳細
流れるような曲線と細密な透かし細工が施された華麗なショルダーと、美しく輝く3連のダイヤモンドが目を惹く、クロスオーバーリングです。クロスオーバーリングは、フランスで“bague croisée”と呼ばれ、まさにアンティークリングの王道のデザインともいえる存在です。クロスオーバーリングについては、アンティーク物語『アンティーク クロスオーバーリングとは?』で詳細を解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
トワエモワなどのクロスオーバーリングを見慣れているアンティークジュエリーファンの方であれば、本リングをひと目見て、その贅を尽くした個性的なつくりにきっと目を奪われることでしょう。細身のラインや極小のミルグレインが随所にあしらわれており、非常に繊細な仕上がりです。そのため、一般的なクロスオーバーリングに比べてショルダーに幅がありながらも重たさはなく、洗練された印象を与えます。ショルダーの上に直接留められることの多いローズカットダイヤモンドが、いずれも独立した丸い台座に留められているのも、本リングの個性を演出している要素の一つといえるでしょう。
制作年代は1930年代末から1940年代にかけて。フランスのジュエリー史的には、アールデコの末期~レトロ期に相当します。ダイヤモンドを留めている爪がゴールドなのはこの時代の特徴です。アールデコのデザインは直線的で幾何学的、というイメージが強いと思いますが、 後期・末期になると、直線的なデザインへの飽き、そしてより人間的で親しみやすいデザインへの回帰を求める動きから、デザインにも変化が生じました。柔らかな曲線や自然主義モチーフなどが徐々に復活してきたのです。本リングのショルダーには、自然主義全盛の時代に隆盛を極めたアラベスク模様を連想させるモチーフが取入れられています。直線で並んだ3連ダイヤが45度斜めに留められているのは、ベルエポック・アールヌーボー期とはひと味異なる、この時代ならではのシャープさを感じさせるデザインといえるでしょう。本リングは、1900年前後の華やかな様式をアールデコの解釈で復活させたものと捉えてよいのではないでしょうか。
メインのダイヤモンド3つは、いずれもほぼラウンドブリリアントにカットされています。オープンキューレットもなく、"demi-taille"(トランジションカット)と呼ぶにはかなりモダンカットに近いのですが、やや小ぶりなテーブルサイズやラフガードルなど、オールドスタイルの名残を多少残しているため、「ほぼ」ラウンドブリリアントと表現しました。ルーペで見てもインクルージョンが見当たらない、無色透明のクォリティの高い石です。センターストーンのサイズは約0.25ctです。
マクロレンズ撮影の拡大写真を見ると、片側のショルダー部に比較的目立つ接合用の金ロウが見えます。金ロウはジュエリー制作時にパーツ接合用として使用されるものですので、単なる仕上がりの差かもしれませんが、修復の跡である可能性もゼロではありません。そのため、本来であれば20万円を越す価格のものを、大幅にお値引きして出品させていただきました。肉眼ではまず気になりませんし、もちろん強度的にも全く問題ありません(自分自身も仕入れ時に全く気になりませんでした。装着写真、動画ご覧ください)。
シャンクは18Kゴールド、ショルダー台座はプラチナです。シャンクには18Kを示すフクロウ(Hibou)とプラチナ850以上であることを示すマスカロン(Mascaron)の刻印が押印されています。フクロウ刻印については、アンティーク物語『フクロウ(Hibou)はフランス刻印のジョーカー?』をご参照ください。
アンティークジュエリーに興味はあるけれど、オールドカットの輝きでは少し物足りない、という方にぜひご検討いただきたい、アンティークとモダンの両要素を持ち合わせたお品です。華やかで気品のある本リングは、身に着けるたびに特別な気分にさせてくれることでしょう。
指輪のサイズ直し(ご購入時初回は無償)をご希望の場合は必ず事前にご相談ください。ご希望のサイズにリフォーム可能かお調べいたします。ご自分のリングサイズの調べ方はこちらの記事でご確認ください。