商品詳細
フィリグリー細工の施された"Maille"(マイユ、環)をモチーフに使用した、フランス製のゴールドネックレスです。18Kゴールドを示すフランスのイーグルヘッド刻印が押印されています。
フィリグリー細工はジュエリーにおいて使用されるテクニックで、金や銀などの細い貴金属線をアラベスク調デザインで組み合わせたもの。フランス語では"filigrane"と呼ばれますが、これは"fil à grains"(粒の糸)を省略したものです。この名の由来は、小さな粒(grain)がつながった糸(fil)のように見えること。非常に長い歴史を持つ技術で、紀元前から存在しています。金細工師が丹精を込めて作り出すその繊細なレースのような外観は常に人びとを魅了してきました。特に19世紀から多く制作されるようになったマイユ系ネックレスやブレスレットの人気は現在まで続いており、アンティークジュエリー好きの方々を魅了しています。フランスでは同タイプのものが現在も多く制作されており、フレンチアクセサリーの定番といえるでしょう。フィリグリー細工に関する詳細はアンティーク物語「フィリグリーの歴史(1)誕生と古代」「フィリグリーの歴史(2)中世からマイユの謎まで・完結編」をご参照ください。
本ネックレスの特徴は、下部にしずく型の大きなマイユが垂れ下がるデザイン。1900年前後、ベルエポック期にフランスを中心としてヨーロッパで流行したラヴァリエールネックレスを想起させるエレガントなスタイルです。また、しずく型、楕円、そして真円の3種類のマイユが絶妙に組み合わされているのも本ネックレスの魅力。それぞれの形状が異なることにより、デザインに多様性とリズムが生まれ、個性的な雰囲気を醸し出しています。マイユはネックレス前方に集中しており総数は少なめですが、後方は装着時にさほど目が行かない場所ですので、合理的な配置といえるでしょう。ボリューム感よりも軽やかさと洗練された雰囲気を追及したデザインとなっているのです。なお、重量は4.1gありますので、手に持っていただくとしっかりとした存在感も伝わってきます。
このネックレスにはもう一つの大きな特徴があります。それはクラスプ(留め具)。一見したところバレルクラスプに見えますが、差し込み式(プッシュインスタイル)ではありません。デザインが少しロブスタークラスプ的でもありますが、開閉機構が全く異なります。レバーがクラスプのメインパーツと一体になっており、引くことによりメインパーツそのものがスライド。結果フックパーツが露になり、その片側にチェーンを着脱できるスペースが生じるのです(わかりづらくて申し訳ありません)。スプリングリングクラスプのようにバネが内蔵されていますので、スライドクラスプとも全く異なります。めったに見られないクラスプスタイルで、特に名称等はありません。そのデザインと採用されている機構から、時代的には1940年~1960年頃の製品であると思われます。クラスプに彫られている"Bte SGDG"という文字は、"Breveté Sans Garantie Du Gouvernement"の略。1844年から1969年まで定められていた、特許製品の実際の機能に関する国家の責任を免除するフランスの特許の一種です。
隙間なくマイユの連なったボリューミーなフィリグリーネックレスも素敵ですが、本品のようなデザインバランスにこだわったものも使い勝手が良く、身につける方の魅力を引き立てます。ラヴァリエールのように一粒ぶら下がったドロップ型パーツがさりげなく胸元に揺れ動き、エレガントさと軽やかさを演出してくれるでしょう。