商品詳細
アンティークとしては大変レアな、サファイアのトゥルビヨンリングです。19世紀末から1920年代末頃まで制作されたトゥルビヨンリングのメインストーンは、そのほとんどがダイヤモンドでした。エメラルドやサファイアなどの色石が使用されていた例もありますが、経験上、その数はごく限られており、全体の1%前後、せいぜい5%程度にとどまると考えられます。アンティークファンの方でも、本リングのようなサファイアを使用したトゥルビヨンリングをご覧になられたことのある方は少ないのではないでしょうか。
※トゥルビヨンリングの由来などについては、『オールドヨーロピアンカットダイヤモンドのトゥルビヨンリング』の商品説明で解説していますので、ぜひご覧になってみてください。
サファイアの直径は4ミリ強。この時代としてはテーブルが広くクラウン低めのカットですので、カラット数としては、0.3ctほどと推定されます。ルーペで拡大すると、100年超えジュエリーならではのエッジ擦れも僅かにありますが、インクルージョンも少な目で、非常にシャープな色の美しいサファイアです。透明度が高いためカラーゾーニングも確認でき、天然サファイア特有の表情を楽しむことができます。
商品写真でご覧いただける通り、渦巻きのようなショルダーと、濃紺のサファイアが織りなすコントラストは息をのむような美しさ。では、なぜこの時代のトゥルビヨンのメインストーンはそのほとんどがダイヤモンドだったのでしょうか。そこには、いくつかの理由があります。一つ目は、当時のジュエラーが目指していたトゥルビヨンのイメージ。トゥルビヨンリングの渦巻きスタイルは、主に光の反射を強調するためのものでしたので、輝き重視のデザインとして、無色で光り輝くダイヤモンドが優先されました。次は、その用途です。トゥルビヨンリングの多くは、エンゲージメントリングとして制作されました。当時も、ダイヤモンドが「永遠の愛」の象徴として婚約指輪のスタンダードになっていたことから、メインストーンにダイヤモンドが選ばれるケースが多かったのです。
宝石の流通量も見逃せません。ダイヤモンドが南アフリカから安定的に供給されていたのに対して、サファイアやエメラルドは、鉱山の枯渇や戦火(第一次世界大戦)の影響で、供給が不安定でした。なお、1910年頃には合成サファイアの初期生産が始まっていたと思われますが、主に実験的・工業用のものであり、まだリングを飾ることはありませんでした(合成サファイアが宝飾用として普及するのは1940年代です)。カラーコントラストが重視されたアールデコ中~後期には色石もメインストーンに使用されるようになりましたが、アールデコ初期より前の時期は、前述のような背景もあり、ハイジュエリーのメインストーンに色石が使用されることは、決して一般的ではなかったのです。
シャンク本体と爪の素材は18Kゴールド、ショルダー部に施されているシルバーカラーの金属はプラチナです。ショルダーには計10個の小さなダイヤモンドが留められています。シャンクには18Kを示すフクロウ(Hibou)とプラチナ850以上であることを示すマスカロン(Mascaron)の刻印が押印されています。フクロウ刻印については、アンティーク物語『フクロウ(Hibou)はフランス刻印のジョーカー?』をご参照ください(マスカロンはフクロウのプラチナ版です)。
アンティークのトゥルビヨンリングは、制作数、残存数の少ないアンティークリングです。その中でも希少なサファイア利用の本リングは、当時の制作背景を考えても、かなりスペシャルな一品といえるでしょう。