商品詳細
1905年~1910年頃にイギリスで作られたトンボモチーフのペンダントです。チェーンはリフォームで後世に取り付けられたもの。別途チェーンをご準備いただくことなく、そのまま首にかけてお使いいただけます。
1800年代のラストクォーターから20世紀初頭は、ヨーロッパで昆虫ジュエリーが人気を博した時代です。特にイギリスではヴィクトリアン後期からエドワーディアン期にかけて多くの昆虫ジュエリーが制作され、おしゃれな紳士淑女の胸元などを飾りました。本ペンダントが制作された時期は、ジュエリー史的にはアールヌーボー後期にあたります(イギリスではアールヌーボーをモダン・スタイルと呼ぶこともありますが、ジュエリーの世界ではほぼ同義語です)。
昆虫ジュエリーの特徴は、なんといってもその象徴性でしょう。本ペンダントのモチーフであるトンボは、勇気や機敏性を象徴するとされます。リーダーシップを強めたい人物に好まれるモチーフです。もちろん象徴性だけではなく、その美しさがポイントになるケースも多くあります。アールヌーボー期ではルネ・ラリックのドラゴンフライ・ウーマンが有名ですね。トンボの羽を持つ優雅でしなやかな女性がまるでトンボの妖精のように、自然と一体となり舞い上がる瞬間を捉えています。昆虫ジュエリーの詳細についてはアンティーク物語「昆虫ジュエリーの歴史と魅力」をご覧ください。
ペンダントトップ本体はイギリス製で9Kゴールド。刻印はありません(当店にて純度の科学的検査済み)。割金に含まれる銀の割合が多いためか、その色合いはシルバーがやや強めです。そこまで極端ではありませんが、1920年ころから広く使われるようになったホワイトゴールドの先駆け、といえなくもありません。冒頭でお伝えした通り、チェーンは後から付け加えられたものです。メーカーズマークと"750"刻印から、比較的新しいイタリア製の18Kゴールドのものであることがわかります。留め具の劣化を心配することなくアンティークペンダントをご利用いただけるのは大きなメリットといえるでしょう。
最も目を引く宝石はやはり中央に留められているエメラルド。直径約4mm強と、大きな存在感を放っています。ルーペでご覧いただくと、フランスで"Jardin d'Émeraude"(エメラルドの庭)とも呼ばれる、エメラルド特有のインクルージョンをご覧いただくことができます。極端に多すぎない限り、インクルージョンがエメラルドの価値を下げることはありません。この宝石固有のものであり、個性としてその石を唯一無二のものにする魅力的な要素なのです。また、同時に本物であることを保証する役割も果たしているということを覚えておいてください。
羽と胴体にオープンバックで留められている23個のダイヤモンドは、アンティークジュエリーらしくローズカット。いずれの石も丁寧に美しくカットされ、このカットスタイルらしい上品な輝きを放っています。二つの小さな赤目はシンセティック(合成)ルビーです。シンセティックルビーはアールデコ期と1940年代に最も多く使われましたが、本ブローチが制作された時代にもすでに多く流通していました。Wikipediaによれば1907年におけるベルヌーイ法合成ルビーの年間生産量は約1,000kg。ルビーとしては大きなサイズの1カラット(0.2g)で換算しても、年に500万個が作られていたことになります。
この優美なペンダントを身に纏い、時代を超えた個性的なスタイルを楽しんでください。特別な日のアクセントにぴったりです。