商品詳細
アールヌーボー初期の1890年代にフランスで制作された、18Kゴールド台座にルビーと天然真珠をあしらったヘビモチーフのペンダント兼ブローチです。ヘビは時代を超えてジュエリーの世界で愛されてきたモチーフで、その歴史は古代エジプトにまでさかのぼります。特に19世紀から20世紀初頭にかけて人気を博し、その中でも本品のデザインは定番として、アンティークジュエリーの代表的なデザインとして今も愛されています。
ヘビのモチーフにスポットが当たったのは、エジプトマニアとよばれるムーヴメントが起こった時期。エジプシャン・リバイバルとも呼ばれる、古代エジプトをインスピレーションソースとした特徴的なデザインを持つジュエリーモチーフの一つです。エジプトマニアとは、古代エジプトの文化、芸術、建築などへの強い関心や熱狂を表し、ルネサンス期や18世紀をはじめ、19世紀、20世紀初頭など、ヨーロッパの歴史の中で何度も盛り上がりを見せました。アンティーク物語『エジプトマニアとアンティークジュエリー』でその詳細を解説していますので、ぜひお読みになってください。
古代エジプトにおいて、ヘビは単なる生物ではなく、信仰と深く結びついた象徴でした。様々な神々がヘビの姿で描かれ、特にメレトセゲル(テーベの墓地を守る女神)、レネヌテト(豊穣と農業の女神)、ワジェト(下エジプトの守護神)は、ヘビ(コブラ)と関連付けられています。さらに、病を癒す力を持つと信じられていたり、尾を口にくわえたウロボロスのように永遠の象徴としても捉えられていたり、非常に多様で複雑な意味を持つ、まさに超自然的な存在でした。
本ペンダント(兼ブローチ)が制作されたのは1890年代で、アールヌーボーの初期にあたります。この時期にはエジプト遺跡の調査が活発に行われており、重要な発見が相次いでいました。ジュエリーの流行がアールヌーボーへと向かう中、エジプトマニアの熱も衰えることなく続いていたのです。
本品は、エジプトマニアを体現するだけでなく、アールヌーボーという芸術様式にも見事にマッチしています。アールヌーボーのエッセンスは、有機的な曲線美と、自然主義的な表現。ヘビのモチーフは、まさにこのアールヌーボーの精神を象徴しているのです。そのしなやかな身体のフォルムは、このアールヌーボー様式の美学に完璧に合致したデザインといえます。また、自然主義を体現するために多くの動物や昆虫がモチーフとなった時代ですので、ヘビとアールヌーボーの親和性は非常に高いといえるでしょう。アールヌーボー期にフランスで活躍した舞台女優のサラ・ベルナールは、アルフォンス・ミュシャがデザインし、ジョルジュ・フーケが製作したヘビのブレスレット(と指輪)を身につけていました。
18Kゴールド製で、留め具のCクラスプにフランスのイーグルヘッド刻印が押印されています。本デザインのヘビブローチにはゴールドプレート(金メッキ)系のものも散見されますが、本品のように金無垢で作られているものは価格帯が全く異なる高級品です。ピンは19世紀のアンティークジュエリーによく見られる、本体を超える長めのスタイル。頭の上に留められているルビーは、そのやや紫がかった色合いや低い透明度などから、この時代の非加熱のものであることがわかります(アンティークの非加熱ルビーについては、アンティーク物語『アンティークジュエリーの非加熱ルビー』をご参照ください)。頭の先端には、やや歪なフォルムが魅力的な天然のハーフパールがあしらわれています。留められている宝石からも、しっかり時代のあることが分かりますね。ペンダント用チェーンの留め具は、下が開いたフック型になっており、簡単にチェーンを掛けられる仕様です。また、薄い服地であればこの部分をクリップとして留めてもお使いいただけます(装着が少し大変です)。
アールヌーボーの曲線美や、古代エジプトの神秘的な雰囲気を持つデザインは、きっとあなたの心を捉えることでしょう。人と違うものを身につけたい方にこそ、ぜひ手にとっていただきたい逸品です。
※商品写真のチェーンやジュエリーボックスは付属しません