商品詳細
オーバルカットのルビーから8枚の花びらが広がる、フラワーモチーフのアンティークリングです。ヴィクトリアン様式の影響が見られるデザインで、19世紀後半らしい雰囲気をよく表しています。台座の表裏にわたって凝った細工が施されており、当時の職人の卓越した技術とこだわりが感じられる唯一無二の作品です。
中央に留められているルビーのサイズは約5.5mm×4.0mm。高さがありますので、重さ的には0.55カラットくらいになります。この時代のほとんどのルビーがそうであったように、本ルビーも非加熱。そのため、現代の加熱ルビーに見られる鮮やかな赤とは異なり、未処理の原石らしい、ピンクや紫味を含んだ柔らかな発色が特徴です。ルビーは12本のゴールドの爪で高く持ち上げられ、オープンバックで留められています。このセッティングにより周囲から光が多く取り込まれていることもあり、非加熱ながらも、程よい透明感が感じられます。
※アンティークジュエリーの非加熱ルビーについては、アンティーク物語『アンティークジュエリーの非加熱ルビー』をご参照ください。
ダイヤモンドが留められている花びらの台座は、シルバー製です。ハンドメイドならではの味わいを残しつつ、精緻な細工で仕上げられています。当初はかなり黒ずんでいましたが、アンティークらしさを失わない程度に表面を軽く磨き、シルバー色を一部復活させました。花びらの輪郭部にはミルグレイン加工が施され、光を受けると花のフォルムがくっきりと浮かび上がります。シルバー台座にオープンセッティングで留められているダイヤモンドは、ごく軽いカットしか施されていません。石によっては原石に近い状態で、ルーペで観察するとその魅力的な個性が楽しめます。20世紀に入ると、ダイヤモンドの台座はほぼプラチナ製になりましたが、19世紀末頃はまだこの組み合わせ(ゴールドフレーム+シルバー台座)のジュエリーが多く制作されていました。
本リングの魅力は、正面から見える表側だけにとどまりません。18Kゴールド製の台座裏面もまた大きな見どころです。卵のようにふっくらと盛り上がった背面には、優雅な曲線を描くスクロール模様の透かし細工が施され、デザイン性を一層高めています。さらに、この高さが生み出す立体感が、指に着けた際の存在感をより際立たせるのです。
シャンクには、非常に興味深い刻印がいくつか押印されています。まずはシャンクの外側に押印された二つのフランスの刻印を見てみましょう。楕円枠に囲まれたシャランソン(コクゾウムシ)と、長方形枠に囲まれたシャランソンです。いずれもフランスと貿易協定を結んでいる国から輸入されたジュエリーに押印されるもので、楕円枠は18Kゴールドを、長方形枠はシルバー800以上を保証します(同じくシルバーの輸入印である白鳥は、貿易協定を結んでいない国からの輸入品が対象)。この刻印により、フランスに輸入された時期が1893年以降であることがわかります。シャンクの内側に彫られた刻印は、数字の「750」。もちろんこれはフランスの刻印ではなく、製造国のもの。当時フランスと貿易協定を結んでいた国で数字のみの刻印を使用していたのは、ドイツです。ドイツでは、1880年代初頭に施行された法律により、金の純度をミリエム(千分率)で表示することが公式に義務付けられました。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ドイツはユーゲントシュティールと呼ばれる独自のアールヌーボー様式を生み出しています。その一方で、イギリスのヴィクトリアンやエドワーディアン様式も積極的に取り入れ、高品質なジュエリーを製造していました。ヴィクトリアン様式を彷彿とさせつつ、アールヌーボーの自然主義モチーフを取入れたこのリングのデザインは、まさにそれぞれの影響が交錯する時代の特徴をよく表しています。
ドイツの卓越した職人技によって生み出されたこのリングは、二つの国、二つの時代様式が交錯する、大変興味深い一品です。そこに秘められた歴史と魅力を感じながら、あなただけの特別なアンティークジュエリーとしてお楽しみください。
指輪のサイズ直し(ご購入時初回は無償)をご希望の場合は必ず事前にご相談ください。ご希望のサイズにリフォーム可能かお調べいたします。ご自分のリングサイズの調べ方はこちらの記事でご確認ください。