アンティーク　スパニエルのミニアチュールリング（ネオ・ルネッサンス様式）

華やかな透かし細工が施された台座にキング・チャールズ・スパニエルのミニアチュールが留められたイギリス製のアンティークリング。制作時期はヴィクトリア時代中期の1850年～1860年頃です。

スパニエルは特にイギリスにおいて貴族や上流階級に愛された犬種であり、狩猟犬としての役割や家族愛の象徴としても尊ばれていました。キング・チャールズ・スパニエルの名は、この犬種を愛し大切にしたチャールズ1世とチャールズ2世に由来します。

ヴィクトリア女王も大の愛犬家。子供時代にプレゼントされたダッシュという名のスパニエルは彼女にとって特別な存在でした。これがスパニエルをモチーフとしたジュエリーの流行を後押しし、特にヴィクトリア時代にスパニエルをデザインしたブローチ、ペンダント、リングが多く作られました。草原に寝そべる構図はこの時代のジュエリーに多く採用されたデザインです。エナメルや宝石で装飾されたこれらのジュエリーは、忠誠心や愛情の象徴として人々に愛されました。

リング中央にベゼルセッティング（覆輪留め）で留められたミニアチュールは、エナメルで描かれた細密画を焼成したもの。ミニアチュールを囲むセッティングのすっきりとした美しいラインは、ヴィクトリアン時代ならではの宝飾技術によって実現されています。直前のジョージアン期（18世紀後半～19世紀初頭）のベゼルセッティングはかなりラフでいびつなのが特徴。本リング上部の華麗な装飾はこのリングがジョージアン後期のものなのではないかとも思わせるのですが、ベゼルの出来栄えからもその後のヴィクトリア時代のものであることが判別できます。

イギリスではヴィクトリア時代中期に、そしてフランスではナポレオン3世の時代に、ネオ・ルネッサンス様式が流行しました。ルネサンス期の芸術や建築が再評価され、建築や装飾品の製作でその要素が積極的に取り入れられたのです。ジュエリーにおいては、装飾的な要素や精緻でカラフルなデザインが特徴。細密な金銀細工や、エナメル・宝石の多用による色彩豊かなものが多く制作されました。

本リングの細密な透かし細工には白、黒、グリーン、ブルー、ピンクなどのエナメルが施されています。この繊細で華やかな装飾はネオ・ルネッサンス様式の影響を大きく受けたものです。エナメルは200年近くの時を経て一部剥がれていますが、そのカラーコンビネーションは典型的なネオ・ルネッサンススタイルであるといえるでしょう。また、ミニアチュール周囲の装飾パーツに施された黒地に白の十字デザインの採用は、同時期に流行したネオ・ゴシック様式にも影響されていることをうかがわせます。ゴールドの刻印はありませんが、当店にて科学的検査を行い15Kであることを確認しております。

スパニエルやネオ・ルネッサンス様式の装飾など、本リングには19世紀の歴史的な要素が詰め込まれています。特にスパニエルモチーフのジュエリーは欧米において最も探されているアンティークジュエリーの一つです。ぜひコレクションの一つとしてご検討ください。サイズは21.5号と大きめですので、自分からいちばんよく見える人差し指につけるインデックスリングとしてのご利用をお勧めします。

※その独特な形状からサイズ直しが難しいため、本リングはサイズ直し対応を行いません。ご了承ください。