商品詳細
1930年代後半にフランスで制作されたダイヤモンドのソリテールリングです。バターカップ台座を使用したデザインは典型的なアールデコスタイル。シャンクと台座はこの時期のソリテールリングに多く使用されたプラチナ製で、プラチナ950を示すフランスの犬の頭の刻印が押印されています。
一般的にソリテールリング(仏語:Bague solitaire)は一粒ダイヤモンドの指輪を指す表現です。少し拡張して、ダイヤモンド以外の宝石を使っている場合にもその宝石名と併せて使われるケースもあります。例えば、ルビーの場合は"Bague solitaire rubis"など。
バターカップ台座はアールデコ期に隆盛を極めたデザインで、その源流はシャンクに直接彫りこんだ爪で宝石を持ち上げる19世紀のベルチャーセッティング(Belcher Setting)です。ベルエポック期にはその両者の中間的なスタイルで作られた台座も存在していました。ちなみにバターカップ(buttercup)はキンポウゲを指す英語。日本ではほとんど知られていませんが、この台座のフランスにおける最もメジャーな呼び名は"chaton soleil"(シャトン・ソレイユ)です。日本語に訳すと「太陽の台座」になります。このスタイルの形状と輝きを的確に言い表した素敵な表現ですね。
現在でも大人気のバターカップには多くの効果・メリットがあります。まずは台座そのもののデザインの美しさ。花や太陽のような形状がリング全体に繊細でエレガントな印象を与え、女性らしさを引き立てます。また、宝石を際立たせる効果があるのも秀でた特質。外側に広がる台座がセンターに留められた宝石を包み込み、その美しさを最大限に引き出すのです。この形状は宝石を大きく見せる効果があるともいわれています。もう一つ忘れてならない大きなメリットは、センターストーンに光を取り込みやすい構造であること。爪が宝石をしっかり支える一方、下部に空間があることにより背面から光が入りやすくなっています。この構造のおかげで宝石の輝きを最大限に高めることができるのです。
バターカップ台座に留められたダイヤモンドのカットはラウンドブリリアントとドゥミタイユ(demi-taille、トランジションカット)の中間といえるでしょう。ドゥミタイユの詳細についてはアンティーク物語「オールドヨーロピアンカットの残り香:”demi-taille”」をご参照ください。本リングが制作されたアールデコ後期の1930年代後半は、ドゥミタイユから完全なラウンドブリリアントカットへの過渡期でした。
ドゥミタイユ的要素が最も強く残っている要素はやはりキューレットの大きさ。直径の3%から5%近くと、完全なラウンドブリリアントではありえない大きめサイズです。現在は実質的にキューレットのカット面そのものが存在しない場合が多いですね。テーブルがやや狭いことと、ロワーハーフファセットがわずかに短めであることもドゥミタイユ的要素として挙げられますが、ドゥミタイユなのかラウンドブリリアントなのかどちらか一択ということであれば、明らかにラウンドブリリアントでしょう。ちなみに、その後の1940年代に入ると、ほぼ完全なラウンドブリリアントカットが主流になります。
アンティークジュエリーは欲しいけれど、オールドカット系ダイヤのおとなしい輝きより現代的なキラキラしたダイヤモンドが好み、という方に特にお勧めいたします。
指輪のサイズ直し(ご購入時初回は無償)をご希望の場合は事前にご相談ください。ご希望のサイズにリフォーム可能かお調べいたします。ご自分のリングサイズの調べ方はこちらの記事でご確認ください。