商品詳細
19世紀初頭、新古典主義の時代を起点としてヨーロッパでモーニングジュエリーが本格的に広まり始めました。1861年にヴィクトリア女王の夫アルバート公が亡くなり女王がモーニングジュエリーを身につけるようになると、この流行が勢いを増します。モーニングジュエリーは喪失や故人への思慕の念を象徴するもので、一般的には黒などの暗い色の装飾が使われました。今回ご紹介するネックレスはモーニングジュエリーがヨーロッパ中で大流行した19世紀後半にフランスで制作されたものです。
本ステーションネックレスはフレンチジェット製のモチーフ、フォックステールチェーン、プッシュインボックスクラスプから構成されています。いずれも19世紀後半のフランスやヨーロッパのアンティークジュエリーで多く用いられた典型的なアイテムです。
天然のジェットは水を含んだ木が化石化したもので、黒い色をしています。磨き上げられたときに生じる美しい艶とその漆黒の色合いが人気を博し、特にイギリスでモーニングジュエリーに多く使われました。フランスでも19世紀後半にモーニングジュエリーブームが起きましたが、国内の鉱山が枯渇してしまっており、わずかな輸入ジェットだけではニーズを満たすことができません。そこで、主にオーストリアで制作された黒く着色したガラスを代替品として使用するようになりました。これがフレンチジェットと呼ばれる、フランスならではの歴史的なジュエリー素材です。アンティーク物語「郷に入れば、のフレンチジェット」にその詳細な背景が解説されていますので、ぜひご覧ください。
円形のフレンチジェットモチーフはダブル編みのフォックステールチェーンに留められています。V字に編み込まれたこのチェーンは、名前の通り狐の尾のようにしなやかで柔らかい見た目と質感が特徴。中世の時代にはすでに制作されており、その後何世紀にもわたって進化してきました。フランスで最も人気があったのは19世紀、特にその後半のナポレオン3世時代です。フォックステールチェーンはそのクラシックな美しさと高い耐久性から現在もジュエリー業界で高く評価されていますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
チェーンの留め金具は差し込み式のプッシュインボックスクラスプ。19世紀初頭に出現した舌型クラスプの発展形で、19世紀後半によく使われていました。ボックスは完全に密閉され、初期のスタイルに比べ小さくなっています。手作りされているため、非常に美しいデザインのものが多いのが特徴です。宝石やエナメルで装飾されていたり、本品のように細かい模様が彫られていることもありました。
ジェットを台座に固定する爪のデザインも非常に手の込んだ個性的なものです。王冠の飾り突起のように、先端に円が配置されたスタイルで作られています。もちろん一つ一つが手作り。アップにしてご覧いただくとハンドメイドならではの風合いを確認することができます。また、ジェットのモチーフはマルカンで横からチェーンに取り付けられているため、一般的なステーションネックレスのようにチェーンが寸断されません。フォックステールチェーンの魅力を最大限に引き出すためのこだわりデザインといえるでしょう。
ネックレス全体の重さは11.1g。ジェット1個あたりの重量は約0.15gですので、差し引くと本品ゴールド部の重量合計は約9.6gということになります。チェーン長は約38.5cmです。チョーカーとしてお使いください。刻印は18Kを示すフランスのイーグルヘッドです。
※写真のジュエリーボックスは付属しません