商品詳細
19世紀以前のカメオはいまひとつ顔のイメージが苦手、という方は意外と多いようです。ローマ風、ギリシャ風のクラシカルな顔立ちはその歴史を感じさせる重厚さが魅力なのですが、たしかに現代的な感覚にはそぐわないかもしれません。本カメオは、そんな古いスタイルに抵抗がある方々にも受け入れられるデザインで作られています。
カメオに彫られる横顔のイメージは時代の経過と共に少しづつ変化していきました。19世紀中ごろに比べ鼻は徐々に小さくなり、おでこの上から鼻の先まで真っすぐ伸びていた直線的なノーズラインには柔らかなカーブへと変化。現代ではツンと上を向く鼻も一般的になってきましたが、本カメオはその中間地点くらいのスタイルです。頬やあごの丸みなどのクラシカルな特徴も残しつつ、現代的な感覚でも十分美しいと感じる違和感のない横顔となっています。なお、近代も含め比較的新しい時代でも古典へのオマージュとしてローマ・ギリシャ風のカメオが作られていることにご留意ください。古代風の顔立ちだから19世紀以前に作られた古いカメオである、ということではありません。
カメオの素材はサルドニクス貝(サードニクス貝)。オレンジ系のコルネリアン貝に比べ、茶色みの強いのが特徴です。また、コルネリアン貝は白色と地色が混じっている部分が多いのに比べ、サルドニクス貝は白と茶の中間色がさほど多くありません。そのため、コントラストが強く、鮮明なモチーフを彫り出すことができるのです。本カメオにおいても、ヴェールをかぶった貴婦人の横顔や両肩上の薔薇がしっかりとした輪郭で表現されており、華奢ながらも上質な存在感を放っています。背景部分にも手抜きの無いその繊細な彫刻はどの角度から見ても立体感と深みを感じさせ、身につけるだけで上品さと気品を引き立てる一品です。背面が暗い場合は茶色が強く、背面から光が当たるとわずかに赤みが入ります。写真でご確認ください。
フレームは14Kゴールド。刻印はありませんが、当店にて科学的な検査を行い純度を確認しております。装着時にピンの先端部分を抑える留め具は、英語でセーフティーキャッチ(safety catch)と呼ばれている回転式ロック機構のついたものです。日本では風車型、風車式などと呼ばれています。原始的な回転式セーフティキャッチは19世紀末に出現し、1910年代頃まで使われていました。本カメオでは、1911年に発明され、主に1920年代頃から広く利用されたスタイルのキャッチが使われています。多少姿を変えながら現在でも多く見かけますので、近いデザインのものをご覧になった方も多いでしょう。なお、本品のキャッチはマシンメイドではなく、ハンドメイドです。
ピンの上げ下げをつかさどるヒンジはチューブヒンジ。アンティークジュエリー好きの方には馴染み深いタイプで、3つのチューブから構成されるヒンジです。2つのチューブはジュエリーに取り付けられ、1つのチューブはピンに取り付けられています。このタイプのヒンジは主に19世紀中頃から20世紀初頭にかけて使用されていました。1920年代頃からは、より現代的で実用的なラウンドヒンジが好まれるようになり、チューブヒンジは次第に使われなくなりました。本カメオが制作された1930年代は既にラウンドヒンジが主流になっており、手作りチューブヒンジの末期といえるでしょう。
チェーンを通すバチカンは内側に回転しますので、ブローチ使いのときに隠すことができます。ぜひ2WAYでお楽しみください。
※写真のチェーンは付属しません。