商品詳細
パリでベテランの女性ディーラーから仕入れたペンダント兼ブローチです。アンティークジュエリーに馴染みのある方であれば、典型的なアールヌーボースタイルであることが分かると思います。大変素敵なジュエリーなのですが、”訳あり”なため激安価格で販売することにいたしました。以下、背景をご説明いたします。
日本に持ち帰ったのち、「あれ?」と思うことが二つありました。
・某老舗アンティークジュエリー店で全く同じジュエリーが販売されているのをネットで偶然発見
・鑑別においてドロップ型パールが「淡水養殖真珠」とされた。(上部の小さな真珠二つは「天然真珠」)
淡水養殖真珠はアールヌーボー期よりかなり先の1930年代以降に事業化され、20世紀半ばから一般的なジュエリーに広く利用されるようになりました(藤田昌世氏が1924年に琵琶湖で養殖を試験し始めています)。ミキモトが世界に広めた海水養殖真珠より後の時代の新しい養殖真珠なのです。ドロップ型パールの形が整いすぎていたため、天然真珠でないことは仕入れ時に把握していました。脱落や破損により新しい真珠に取り替えただけなのだろうと判断しましたので、その旨明記すれば特に問題なく販売可能と考え仕入れたのです。
リプロダクト品の可能性があるのではないかという疑念が生じたのは、全く同じジュエリーが日本で販売されているのを発見したためです。もちろん100年以上前のアンティークジュエリーでも、同じ型枠を使って同型のものがいくつか製造されることはあります。とはいえ、そこまで数の多くないジュエリーのうち、二つも日本に持ち込まれる確率はかなり低いはず。大量生産的に相当数の個体が作られていた可能性があるのです。さほど気に留めていなかった、パールが淡水養殖であることの意味合いもそこで変わっていきました。
本品には確実にフランスで押印されたものであるイーグルヘッド刻印がありますので、フランス製であることは間違いありません。ちなみに、念のため当店でも科学的検査を行い18Kゴールドであることを確認しております。
前置きが長くなりましたが、本品の由来として以下の二つが考えられます。
①リプロダクト品
理由:淡水養殖真珠が使用されている。本品以外に全く同じものが日本で販売されている。
②アールヌーボー期の作品(ドロップ型パールは後世取り替えられたもの)
理由:本品に留められている小さな天然真珠二つは比較的整った形状であり、(養殖の副産物であるケシ真珠ではなく)19世紀から20世紀初頭に多く使用された天然のシードパールであると思われる。リプロダクト品は主にアジアの特定の数か国で作らることが多いので、フランス刻印の存在がリプロダクト品である可能性を低くしている。写真で見る限り、もう一方の(他店の)ジュエリーにセットされているパールはやや歪な形状で、天然真珠と想定される。よって本品もオリジナルの天然真珠を後に取り替えたものであるという可能性が高い。
質感的にも②の可能性が高いのですが、パールの背景について売主から何も伝えらていないこともあり、残念ながらプロとして確定するには至りませんでした。もちろん、20世紀半ば頃にアールヌーボーへのオマージュとして制作されたものなど、他の可能性もあります。万が一にでもお客様にご迷惑をおかけすることの無いよう、激安価格で処分させていただきます。
※写真のジュエリーボックスやチェーンは付属しません