商品詳細
華麗なカルトゥーシュ装飾が目を惹く、ベルエポック期のゴールドメダイです。表には”OJ”という文字のモノグラムが、裏には”15 Juin 1911”(1911年6月15日)という日付が彫られています。大変美しい書体で表現されたこれらの文字は、本メダイの美的魅力を高める重要な要素のひとつといえるでしょう。外周の形状はハート形にも見え、売り手の方はコルディフォルム(Cordiforme、ハート形)と表現していました。
西欧では、誕生日や洗礼日に、親や祖父母などの近親者、名付け親などが日付を刻んだゴールドのメダイを贈る習慣があります。例えば、伝統的な洗礼メダイは、表面に聖人や天使といった宗教的なシンボルを置き、裏面に子どものイニシャルや洗礼名、そして日付を刻んだスタイルです。アンティークジュエリーにご興味のある方は、このような宗教的なモチーフのメダイを目にされたことも多いのではないでしょうか。19世紀後半、ジュエリーが一般の人々に普及するにつれ 、表面の宗教モチーフが受取人のイニシャル(モノグラム)へと置き換えられたメダイも制作されるようになりました。
本品もそういった流れで制作されたジュエリーの一つです。裏の日付は誕生日なのでしょうか、それとも洗礼日なのでしょうか。”OJ”というイニシャルから、”Olivier Jourdan”、”Ophélie Joubert”など、いろいろな名前が思い浮かびます。メダイはリヨンで制作されたものですので、おそらくリヨンに住まわれていた方なのでしょう。1911年といえば、ベルエポック(良き時代)の爛熟期。街には活気が溢れ、パリでは芸術家たちがモンマルトルやモンパルナスに集っていた時代です。裏面に彫られた1911年6月15日の2日前の6月13日には、ストラヴィンスキー作曲のバレエ「ペトルーシュカ」が、ロシア・バレエ団によってパリのシャトレ座で初演されました。ロシア・バレエ団の活動は、その後のアールデコ様式にも大きな影響を与えた出来事です。リヨンで暮らしていた家族が、そのような時代にどのような生活を送っていたのか、遠い昔に思いを馳せるとわくわくします。
カルトゥーシュ装飾(Cartouche)とは、内側にモノグラムや家紋、銘文などが刻まれた縁飾りです。名称の由来は古代エジプトですが(ヒエログリフで書かれた王の名を囲む楕円形フレームの枠)、装飾様式としてはルネサンス期に紙や巻物を模したものとして再興されたものです。その後、バロック期にかけて宗教的・建築的な装飾として発展し、ロココ期にその頂点を迎えました。ベルエポック期のカルトゥーシュ装飾はこのロココ様式のもののリバイバルではありますが、非対称なデザインが多かったロココ期のものに比べ、対称性を重視しているといえます。当初は端がくるりと丸まった巻物(スクロール)を模した装飾は、唐草(アラベスク)やアカンサスの葉などの植物的な要素と融合し、より複雑でボタニカルな装飾へと進化していきました。なお、「ガーランド装飾」とは異なるものであることを念のため付け加えておきます。
この歴史的なアンティークジュエリーは、そのデザインと背景において、もはやメダイという枠を超越しています。細密なカルトゥーシュ装飾、大変美しい書体の手彫り文字、実日付け入り、馬の頭刻印(1838年-1919年)など、魅力的な要素が凝縮されたお品です。もちろん天使やマリア様のメダイも素敵ですが、一部の方には宗教的なモチーフに抵抗のある場合もあります。デザインに主眼を置いた本品は、より手に取りやすい側面があるといえるでしょう。イニシャルや特別な日付けが彫られている大変ユニークなお品ですので、オンリーワンを好まれる方にもお勧めです。
※商品写真のチェーンやジュエリーボックスは付属しません