商品詳細
刻印マニアの方々に向けて仕入れた、知る人ぞ知るレアな刻印が押印されたピアスをご紹介いたします。その刻印はフランスの"ET"。ジュエリーの専門家でもめったに目にすることが無い、大変珍しいものです。私自身も長い間出会いがなかったのですが、数年前にようやくフランスの蚤の市で発見し入手することができました。売り手の方もこの刻印の意味と価値に気が付いていなかったようです。
"ET"刻印に関しては、誤った、もしくは一面的な情報が広まってしまっています。日本ほどではありませんが、フランスでも中途半端な解説・情報が多いので要注意です。不正確な情報の例として、・"ET"刻印が押印されているジュエリーは全て非常に古いアンティーク品である、・9Kより純度が低いものだけに押印されている、などが挙げられます。
それでは"ET"刻印の役割、背景をご紹介しましょう。"ET"は「純度表示の免除」という意味の"Exempté de Titre"の頭文字。シルバーにも使用されることのある刻印ですが、本商品説明における解説はゴールドにしぼったものです。
この刻印の役割は時代とともに変遷してきました。順にご紹介いたします。
第1期(導入~1893年):フランスとの間に宝飾品の輸出入に関する条約を結んでいない国(非締約国)から輸入された、純度保証の無いジュエリーに押印。
第2期(1893年~1994年):当時のフランスの販売可能最低純度(18K)を下回る宝飾品のうち、芸術的もしくは歴史的価値があると認められた中古・アンティーク品に押印。
第3期(1994年~現在):9K未満のものに押印(任意)。
フランスの某書籍における解説が元となり、1749年から存在する刻印であると紹介されることが多かったのですが、マイケル・フィーガン氏などの研究により、1864年に導入されたとする説が近年優勢になりつつあります。
本ピアスは第2期に相当するものです。"ET"刻印は時代とともに保証純度が変遷していますので、当店で化学的検査を行い、15Kであることを確認しています。
この時期(第2期)は、ディーラーにより保証事務所に持ち込まれたゴールドジュエリーの検査結果が18K未満であった場合、当局がそのジュエリーを破壊していました(返却はされます)。「最低純度を満たしていないジュエリーは売らないように」ということです。厳しいようですが、フランスにおける高レベルの宝飾品文化維持を目的とした制度でしたので、やむを得ません。壊された経験のある知り合いの仏ディーラーによれば、「もちろん修復して売っていたよ」とのこと。
この第2期の"ET"刻印の本質的な役割は、歴史的もしくは芸術的価値のあるジュエリーを当局の破壊から保護することでした。なお、販売可能な最低純度を定めた制度は、世界の実情に合わないという理由により1994年に廃止されています。
本ピアスに"ET"刻印が押印された経緯を確認する術はありませんが、芸術的もしくは歴史的な価値を当局に認められたものであることは間違いありません(おそらく「芸術的価値」の方でしょう)。プロでもめったにお目にかかれないレアな刻印の付いた本ピアスは、刻印マニアの方に限らず、フランスのジュエリーをお好きな方にとっても価値の高い一品かと思います。