アンティークジュエリーは人を選ぶ?

 蝶のブローチを乗せた女性の手蝶のフィリグリーゴールドブローチ アールヌーボー

みなさま、こんにちは!

時々、知り合いやお客様から「アンティークジュエリーは素敵だけれど、誰にでも似合うわけではないのでは?」と問われることがあります。もちろん、私の答えは「いいえ」です。それを販売する者の模範回答ではありますが、ジュエリーを愛する一女性として、その理由には以下のようなことが挙げられると思います。

1. アンティークジュエリーは「一色十色」

決して特別なものではありません。実際に過去の時代に人々が愛着を持って身につけていたもの。唯一無二でユニークなものだからこそ、きっと誰にでも似合うものが見つかるはずです。それぞれが独自の特徴や美しさを持ち、多様な人々に合うといった特性があります。

2. アンティークジュリーという「選択」

世の中には美しいジュエリーやアクセサリーが山のようにあり、私たちはそれらの中から自由に選択することができます。たくさんの魅力を持つアンティークジュエリーですが、見た目の美しさや個性だけではなく、地球にも優しく、倫理的なジュエリーであることも大きな魅力です。自らの価値観を大切にする人々にとって、ジュエリーを選ぶ際にサステナブルでエシカルなものを選べるのは魅力的な要素です。美しいものを身につけながら、自らの信念や価値観に基づいたエシカル(倫理的)でサステナブル(持続可能)な精神を大切にすることができるのです。これらのテーマについては、過去のブログ「アンティークジュエリーを選ぶ理由」でも取り上げさせていただきました。

3. アンティークジュリーという「面白さ」

それぞれに歴史やストーリーがあるところも魅力。唯一無二で一つとして同じものは存在しません。身につける喜びと同時に歩んできた歴史やストーリーを聞いたり、想像したりできるのも醍醐味ですね。また、それゆえにそのジュエリーにまつわる良いストーリーもあれば、そうでないエピソードも存在するのです。

こちらのブログを書くにあたって、多くの方がその魅力だけでなく、謎や逸話についても検索されていることを改めて知りました。私自身もショップを運営するにあたり、その利点と欠点の両方についてリサーチしましたが、いずれも興味深い内容が多いです。

ホープ・ダイヤモンド

 ホープダイヤモンドレプリカ

出典:ウィキペディア「インドから持ち帰った当時のホープ・ダイヤモンドのレプリカ(キュービックジルコニア製/112.50カラット」

ところで、みなさまは「ホープ・ダイヤモンド」をご存じでしょうか?青い色を持つ、現時点では44.52カラットの希少なダイヤモンドです。その輝きと神秘的な歴史が独自の伝説として広く知られ、その歴史は17世紀に遡ります。1666年にフランス商人ジャン・バティスト・タヴェルニエが当初112.50カラットあったブルーダイヤモンドをインドから持ち帰ったことから始まります。タヴェルニエはヒンドゥー教寺院の女神シータの彫像の片目からこのダイヤモンドを盗んだとされ、その後「呪い」によって謎の死を遂げたという逸話が残っています。

しかし、この話は作り話であることが判明。実際にはタヴェルニエはフランスに戻り、その宝石を高値でルイ14世に売却しました。しかし、このブルーダイヤモンドの歴史はそれだけでは終わりません。ルイ14世はこの宝石を112.50カラットから69.04カラットにカットダウンさせ、王の儀典用スカーフの飾りとして使用したことから、「フレンチブルー(Le bleu de France)」と呼ばれるようになりました。みなさまもご存じのように彼の子孫であるルイ16世と王妃マリー・アントワネットはフランス革命中に処刑され、1792年に「フレンチブルー」を含む王族所有の宝石類は略奪されてしまったのです。

20年後の1812年に再浮上したブルーダイヤモンドは、さらにサイズダウンされイギリスのダイヤモンド商ダニエル・エリアーソンが所有。その後、コレクターのヘンリー・フィリップ・ホープが購入し、彼の名を冠して「ホープ・ダイヤモンド」と呼ばれるようになります。その後、カルティエの創業者の孫、ピエール・カルティエが1910年にホープ・ダイヤモンドを取得しましたが、彼も災難を逃れます。カルティエはこのダイヤモンドを社交界の人気者であったエヴァリン・ウォルシュ・マクリーン夫人に売却。マクリーン夫人は不運に見舞われたので呪いの象徴とされてしまいます。その後、宝石商ハリー・ウィンストンがマクリーン家からダイヤモンドを購入し、彼は呪いを信じることなくジョークにしていました。言うまでもなく、彼は大成功を収めましたね。

現在のホープダイヤモンド

1958年にホープ・ダイヤモンドはハリー・ウィンストンによってスミソニアン協会に寄贈されました。現在、2.5 億ドルの価値があると言われるホープ・ダイヤモンドは、その神秘的な魅力を称賛され、多くの人々を魅了し続けています。この宝石には一部の伝説や迷信が存在しますが、ほとんどは宝石の価値や魅力を高めるために脚色されたものです。

その美しさと歴史的な背景から多くの注目を集め、現在はアメリカ国立自然歴史博物館に収蔵されています。伝説では所有者に不運をもたらすとされていますが、科学的な根拠はありません。それでも、一部の人々にとってはアンティークジュエリーを所有することにためらいがあり、不安要因になっているのも事実です。しかし、その魅力は計り知れず、多くの人々を魅了し続けています。

詳細は、ウィキペディア(ホープダイヤモンド)をご覧ください。

ジュエリーコーディネート

フィリグリーのブレスレットを付けた女性

 フィリグリーのダブルストランド ブレスレット(18Kゴールド)

すっかり、ファッションの一部として定着した「ジュエリーコーディネート」。英語では一般的に "Jewelry Styling" と呼ばれていますが、服装やヘアスタイルと同様にその人の個性をスタイリングする(惹きたてる)上で重要な料理にたとえるとスパイスのような役割です。料理にスパイスを入れるか入れないかによって断然、味が異なりますよね。

以前、フランスで伝統菓子を学んでいたことがあり、コロナ禍は(精神を落ち着かせるために?)毎日のように焼き菓子を焼いていた時期があります。次第にレシピ通りに作ることに飽き、自分好みのアレンジがしたくなったので、レシピにはない素材やスパイスを入れたり、材料の配合を変えたりして、自分好みの味を追求していました。ジュエリーコーディネートもお菓子作りと同じです。少しずつ集めた大切なジュエリーと洋服のコーディネートを考えるうちに、今まで気づかなかった「自分らしさ」を発見できるようになりました。コーディネートする際、鏡の前でチェックするだけではなく、コーディネートしたワードローブの写真をとっておき、後から見てみると意外な発見や反省点があったりするので、ぜひ試してみてくださいね。

フランスかぶれと言われてしまいそうですが、いつの時代も私のおしゃれのお手本はパリジェンヌ。自分らしさを奏でるお洒落の天才、というか、個性を大切にする国民性から、「人と同じなのは嫌」という人が多いからなのですが。。とにかく、流行に敏感でありながら、ファッションに対しても自分らしさ(自分に似合う色、似合うデザインなど)を上手く取り入れているのことに脱帽します。55歳の日本人女性である私がミニマルなファッションに目覚めたのはごく最近のことです。コロナ前にフランスに移住することになったのがきっかけなのですが、不要なワードローブを整理した結果、おしゃれのバリエーションを増やすために手持ちのジュエリー(アクセサリー)をコーディネートに活用するようになり、より一層おしゃれが楽しくなりました。フランス人の義母は70歳を過ぎても赤いルージュでおしゃれをしていたので、いつか(もうすぐ?)私もそんなおばあちゃんになるのが憧れです。

たくさんの選択肢がある今日。特に唯一無二で、流行に捉われないタイムレスなアンティークジュエリーには、自分らしさを引き出すチャンスが潜んでいるかもしれません!お手持ちのジュエリーを楽しく組み合わせることで、「個性」や「好き」がコラボして新たな傑作ジュエリーが生まれることも。フランス人の友人たちであれば「ルールやブランドにとらわれず、貴方が身につけていて心地よく素敵だと感じることが一番!」とアドバイスしてくれるはずです。

フランス人のように大胆なファッションや完璧なコーディネートができなくても、おしゃれに自分らしさをプラスすることは誰にでもできます。未だコーディネートは難しいと感じたら、ご自身を絵にたとえてみてください。子供のころ、真っ白な画用紙に好きなものを自由に描いて、思いもしない傑作が生まれた経験はありませんか?感性が豊かな人も、私のようにそうでない方も、自分が心地よいと思えるものを身につけるだけでハッピーな気持ちになれます。また、絵は人の心を映すとも言われますが、コーディネートもその時の気分やシーンによって選ぶ選択肢が変わるものです。

パールネックレスとアンティークペンダントをつけた女性

アンティーク三日月と星のゴールドペンダントトップ(天然真珠)

ちなみに私がジュエリーをコーディネートする上で大切にしているのは以下4つの点です。名付けて"Happy Jewelry Styling for All(誰でも幸せになれるジュエリーコーディネート)"

  1. 「テーマ」を決める( 例:シーンやその時の気分などに合わせて)
  2. 「好き」を入れる(例:好きなジュエリーやコーディネート方法など)
  3. 「似合う」ものを入れる(例:自分に似合う色や素材など)
  4. 「思い出」のものを入れる(例:家族や旅にまつわる思い出の品など)

    上の写真は、最近、商品写真を撮る際にコーディネートしたものなのですが、以下の要素を考慮しながらコーディネートを考えました。

    1. テーマ:マドンナの "Like a virgin" フェミニンかつ自由なイメージ
    2. 好き:優しさがプラスするアンティークジュエリーと現行品の重ね付け
    3. 似合う:イエローベースの肌に馴染むパールと首元すっきりVネック
    4. 思い出: 祖母からもらった大切なアコヤ真珠のネックレス

    もちろん、その場に合ったものを選ぶことも大切ですが、身につけていて心地よく、ハッピーと感じられることが一番です!これら4つの要素が調和することで無理なく、自分らしいコーディネートが完成するのではないかと思います。私のようにミニマルなおしゃれを目指されているみなさまも、お手持ちのジュエリーを活用して、自分らしさを演出されてみてはいかがでしょうか。自由におしゃれを楽しみ、ジュエリーコーディネートを通じて、貴女らしさを再発見してくださいね。