トワエモワとセレブリティ

Bonjour 皆さん!オーナーのラファエルです。
トワエモワと聞いて「今はもう秋~」という歌詞が哀愁のあるメロディーと共に浮かんだ方、私と同年代かもしれませんね。
もちろん本日のお題はフランス発祥のリングスタイルとしての"toi et moi"(あなたと私)。アンティークジュエリーでもおなじみのスタイルです。まれに"vous et moi"(vousはtoiの敬称)と呼ばれることもあります。

このスタイルのリングはゴールドやプラチナなどの貴金属にセットされた2つのメインストーンから構成されます。世に広まり始めた頃は、メインストーンに同じサイズで色が異なる宝石が使われていました。それは、世界初のトワエモワリングといわれているある婚約指輪がそのようなデザインであったためです。
ご存知の方も多いでしょう、その婚約指輪とは本日のセレブリティの一番手、ナポレオン・ボナパルトが後の皇后ジョゼフィーヌに贈ったもの。時は1796年。もちろんこのタイミング以前に存在していた可能性もゼロではありませんが、せっかく宝飾業界の方々が大事にされているストーリーですので、私もそう信じることにしています。まずこの指輪を見てみましょう。

アンティークのトワエモワリング。ナポレオンが婚約指輪として贈ったもの。


ペアシェイプカットの大きなダイヤモンドとサファイアがローズゴールドのシャンクに並んで留められています。それぞれの宝石が表しているのはもちろんナポレオンとジョゼフィーヌ。当時27歳でまだ一介の将官でしかなかったナポレオンにとってこの指輪は非常に高価なものであり、まさに彼の真実の愛を象徴していたといえるでしょう。ちなみにこの指輪は2013年のオークションで730,000ユーロの値が付いています。

ナポレオンの大出世に伴い、トワエモワはヨーロッパの貴族や上流階級の人々の間で人気を博しました。メインストーンは2つの魂の結びつきと永遠の愛の約束を象徴し、安定的な関係を表しています。2つの宝石はそれぞれ独立していますが、同じリング上に留められており、愛し合う者たちの強い結びつきやお互いを支え合う補完的な関係を反映しているのです。

19世紀の初頭から末まで婚約指輪として大変人気がありましたが、その後のベルエポック期(19世紀末から20世紀初頭)には、さらにその人気に拍車がかかりました。この時代のリングには象徴主義やアールヌーボーの影響が見られ、デザインもより芸術的なものが増えていったのです。このスタイルのアンティークジュエリーの多くがベルエポック期のもの、といっても良いでしょう。

オールドヨーロピアンカットのダイヤモンドと天然真珠のトワエモアリング

ダイヤモンドと天然真珠のトワエモワリング

多くの場合、一方の宝石にダイヤモンドが使われています。ダイヤモンドは純粋さや愛の不変性を表しており、愛する二人ができるだけ長く一緒にいるために結びついていることを象徴しています。もう一方の石は多くの場合、サファイアまたはルビー。サファイアは真実と忠誠の象徴で、希望や安らぎを、ルビーは美しさ、平和、そして情熱を表します。また、深い純潔と貞操を象徴しているパールも非常に人気です。

スタイルは時代とともに進化していき、デザインの定義は拡大されました。当初は同じサイズの異なる宝石をセットするのが一般的でしたが、同じ色、同じ宝石や、完全に異なるサイズの宝石を組み合わせることもさほど珍しくはありません。

ダイヤモンドのアンティークトワエモワリング

 さて、本日のメインテーマであるセレブリティ関連のトピックに戻ります。いつものように前置きが長くなってしまい、失礼いたしました。我が奥様には常日頃「いいから早く結論プリーズ!」と言っておきながらこのていたらく、困ったものですね。

ナポレオン&ジョセフィーヌに続くのはジャクリーン・ケネディ。皆さまよくご存じのアメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの(元)奥様です。ケネディ亡き後は大富豪オナシスと再婚し世界を驚かせました。婚約指輪はもちろんトワエモワ。Van Cleef & Arpelsがデザインしたリングにセットされた2つのメインストーンは、いずれもエメラルドカットの2.88カラットのダイヤモンドと、2.84カラットのエメラルド。周りをバゲットカットのダイヤモンドに囲まれていました。

自分の感性をリングに付け加えるのを躊躇しなかったファーストレディーは、結婚してからほぼ10年後にこの婚約指輪をカスタマイズ。メインストーンを囲むダイヤモンドをより大きなマーキスカットのダイヤモンドに取り換え、ショルダーにラウンドブリリアントカットのダイヤモンドを埋め込みました。

ケネディ夫妻の婚約指輪。ダイヤモンドとサファイアのトワエモワ。

お次はアリアナ・グランデ。ビルボードの全米チャート初登場1位が最多というギネス記録を持つアメリカの世界的歌姫です。一時期は日本通、日本大好きなセレブとして話題になりましたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。「七輪」タトゥー事件が懐かしいです。ご存じない方はぜひ検索されてみてください。

 アリアナの婚約指輪もかなり個性的なスタイルのトワエモワ。大きなオーバルシェイプダイヤモンドの横に一粒のパールが留められています。ダイヤモンドの斜め留がとてもユニーク。余談ですが、ブリリアントスタイルにカットされたオーバルシェイプのダイヤモンドは、ファイアー(虹色の輝き)がラウンドブリリアントのものに匹敵します。

パールの方にもちょっとした逸話があり、ファンの間では亡き祖父のネクタイピンから採られたものであると信じられています。いろいろ調べてみると、どうやらこの話は2つの異なるストーリーを結び付けたもので、婚約指輪のパールが祖父のものかどうかは定かではない(本人からのコメント無し)というのが事実のようです。

アリアナグランデの婚約指輪トワエモワ

Instagram: @Arianagrande

 カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)はご存知でしょうか。あのキム・カーダシアンの父親違いの妹です。リアリティ番組「Keeping Up with the Kardashians」にカーダシアン家のメンバーとして出演しているのをご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。

実業の分野でも優れた才覚を持ち、フォーブスが2014年に発表した「米国で最も稼いだ女性起業家」60人に史上最年少で27位にランクインしました。2018年には同じくフォーブスが発表した「世界で最も稼ぐ30歳未満のセレブリティ」ランキングで1位に。ロサンゼルスの高級住宅街に約40億円の豪邸を買ったことが話題になったこともある、とにかくけた違いのセレブリティです。

カイリーのトワエモワは元夫のトラヴィス・スコットから贈られたもので、ペアシェイプと長方形のダイヤモンドが並んでいます。婚約指輪ではありません、ただの?贈り物です。ダイヤはそれぞれ4.5カラットといわれていますが、詳細は不明。トラヴィスは同時に娘ストーミにも同スタイルの小さなリングを送っています。「小さな」といってもダイヤの大きさはそれぞれ1.5カラット(推定)。いやはや、言葉もありません。

カイリー・ジェンナーのダイヤモンドのトワエモワ

Instagram: @kyliejenner

ミーガン・フォックスがマシン・ガン・ケリーから贈られた婚約指輪(ペアシェイプのダイヤモンドとエメラルド)も、映像監督のアラン・ファーガソンが歌手ソランジュに贈ったプロポーズリング(スクエアカットのダイヤモンドとエメラルドカットのダイヤモンド)もトワエモワです。

ミーガン・フォックスの婚約指輪、トワエモワ。

ミーガン・フォックスのトワエモワ|Instagram: @machinegunkelly

きりがありませんので、セレブリティのリング紹介はそろそろお開きにしましょう。古い時代のものと新しい時代の融合を少しでもお楽しみいただけたら嬉しく思います。

トワエモワは二人の愛を象徴する特別な記念のアイテムとして、またその時代を超えた美しいデザインが非常に高く評価され、今日でも大変人気があるスタイルです。大ぶりの宝石を使った近代のゴージャスなものも素敵ですが、歴史の刻まれた味わい深いアンティークリングも大変魅力がありますので、ぜひご覧になってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!