ガレット・デ・ロワで新年の運試し

 自家製ガレット・デ・ロワ

みなさまはもう、あのお菓子を食べられましたでしょうか?1月のスイーツと言えば、「ガレット・デ・ロワ」というほど日本でもすっかり定着してきましたね。ひと昔前まで、なかなか手軽に食べることができませんでしたが、今では食べ比べができるほどになり嬉しいです。

上の写真はちょっと不格好ですが、コロナ禍に自宅で手作りしたものです。以前、フランスでフランス伝統菓子の勉強をしていたことがあるので、自分なりに少しこだわって作ってみました。フランジパーヌに薔薇色のプラリネローズを使いたかったのですが市販のものが見つからず、何とかプラリネローズも手作りした懐かしい記憶があります。

ガレット・デ・ロワは、1月6日の公現祭*に食べられるパイの中にフランジパーヌと呼ばれるアーモンドクリームが入ったフランスの伝統菓子のこと。みなさまもご存じの通り、フランスではガレット・デ・ロワを食べないと一年が始まらないと言われるほどの定番スイーツです。
*公現祭(Epiphany)とはクリスマスから12日目にあたり、一般的には1月6日に祝われます。
星に導かれてやってきた「東方の三博士」がキリストのもとを訪問し、祝福した日とされるキリスト教において重要な日。

信仰深いフランス人にとって、キリストの誕生を知らせた「星」は神聖なもの。アンティークジュエリーに星のデザインが多く用いられているのも納得です。

アンティーク ゴールドブレスレット(ダイヤモンド&ルビー )

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聖マタイによる福音書には、三博士がイエス・キリストの誕生を祝い、贈り物を献上するエピソードが含まれています(マタイによる福音書2:1-12)。キリストの誕生が異教徒にも伝えられ、三人の博士がキリストを礼拝しに来るという出来事を記念するもの。そのため、公現祭と三博士の物語は、キリスト教の伝統的な祭りとして広く祝われ、ガレット・デ・ロワもこの祭りに関連して楽しまれています。

前置きが長くなってしまいましたが、ショップ名「マエアス」は、当店のオーナー、ラファエルの母の旧姓であり、ブルターニュ語で「聖マタイ」、フランス語で「Matthieu」を意味します。そこで、今回はジュエリーの話題からは離れますが、ショップ名と聖マタイとの関連からフランスの伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」についてお話をさせていただきます。

ガレット・デ・ロワを直訳すると「王様のケーキ」。英語圏では"King's Cake"とも呼ばれていますね。1月6日に切り分けてフェーヴを引き当てた人は王様(女王様)になることができます。その日は王冠をかぶり、みんなから祝福され、新しい年を幸せに過ごせるというもの。

もともと、ガレット・デ・ロワには現在のような陶器のフェーヴではなく、本当の豆(fève)が使われていました。これは公現祭における古代ローマ時代から行われていた習慣に基づいています。豆を入れたパンを分け与え、それを食べることで「幸運の王様」または「女王様」が選ばれると信じられていました。

ここで面白いエピソードを一つ。この習慣は、現代のように必ずしも楽しいものではありませんでした。なぜなら、当時、王様(女王様)に選ばれた人は、みんなにご馳走を振る舞わなければならなかったのです。選ばれた人の中にはフェーヴ(豆)を飲み込んで必死に隠し通したという説もあるほど。

時が経つにつれ、フェーヴには様々な素材やデザインが用いられるようになりました。1870年代になると現代のような陶器製の小さなフィギュアが一般的になり、食べられるものから観賞用の小さなアートピースに変わっていったのです。

このようにガレット・デ・ロワはフランスで公現祭を祝う際に楽しまれる伝統的なお菓子としての長い歴史があります。しかし、フランス革命時代は、その呼び名や慣習が変化しました。当然、フランス革命時は王様や王侯貴族に関連するものはタブーとされていました。それでも一部のパン・ケーキ職人たちは「自由のケーキ」や「平等のケーキ」といった名前に変えて販売し続けたのです。彼らの努力の甲斐もあり、その伝統は今もなお受け継がれています。

エリゼ宮殿ガレット・デ・ロワ祝賀会

 

毎年、エリゼ宮殿で行われる公現祭とガレット・デ・ロワの祝賀会では、写真のように直径1.5mはあるであろう巨大なガレット・デ・ロワが振舞われます。しかし、フェーヴや王冠が使用されることはありません。エリゼ宮殿はフランス大統領の公邸であり、国家の象徴として中立性が重要視されているためです。共和制の価値観を尊重し、王政や貴族制度に関連する象徴的なアイテムを避ける傾向が未だ見られるようです。

今年は、パリ地区のパン職人組合が主催するガレット・デ・ロワのベストコンクールに100人以上のパティシエ、パティシエールが参加したそうです。本年度のガレット・デ・ロワの優勝者は。。。DUPONT avec un thé のJasmine Menacerさんです!昨年2位の実績を持つ彼女。優勝の秘訣はこだわりのパイ生地「反転折り込みパイ生地」にあるのだそう。通常の折り込みパイ生地(feuilletage)はバターは生地の中に包まれますが、反転折り込みパイ生地は生地がバターの中に包まれます。生地をバターで包むことで、通常の折り込みパイ生地よりもさらに軽いサクッとしたパイ生地ができるそうです。Jasmineさんのお話では、生地を作るのに3日掛かり、通常の生地よりも手間や高度な技術が必要なのだそう。中身はあえて伝統的なアーモンドを使ったフランジパーヌ(frangipane)で挑んだ彼女ですが、最近では、レモンやピスタチオといったアーモンド以外の素材を使うベーカーたちも多いのだそうです。ちなみにJasmineさんがトップベーカーを務めるサロン・ド・テがあるのは、当店メゾンマエアスのオーナーも高校時代の一部を過ごしたパリ近郊のNeuilly-sur-Seine。本店はノルマンディーのカブールにあり、マルセル・プルーストで有名な本場マドレーヌを提供することでも知られる1912年創業の老舗店です。こちらのガレット・デ・ロワ 1ホールのお値段は65€(10人前)だそうです。お値段もなかなかのものですが、やはり優勝者が作ったガレット・デ・ロワは素材から何もかもが違うのでしょうね♡

Instagram: DUPONT avec un thé

フランスのニュース専門番組「France24」の人気番組の一つ "C'est en France"でも、大きく取り上げられていました。同番組はフランス語のほか、一部英語でも視聴することができますので、興味のある方はぜひご覧になってみてくださいね。

France 24 "C'est en France"(英語)

 南仏のガレット・デ・ロワ

出典:cuisinezavecdjouza

パリをはじめ、フランス北部ではガレット・デ・ロワを食べるのが一般的ですが、フランス南部ではオレンジの花の香りがするブリオッシュで作られたケーキが主役です。フルーツの砂糖漬けのトッピングがカラフルで、クリスマスらしさが引き立っていますね。

1月を代表するフランスの伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」の話はいかがでしたでしょうか。フランスでは新年を迎えると街のブランジュリーにずらりと並び、1月中は何度も食べる人が多いのだそう。意外にアーモンドクリームがさっぱりしているので、ペロリと食べられてしまいます。まだ、お試しでない方はぜひ、ガレット・デ・ロワで「2024年の運試し」をされてみてはいかがでしょうか?

 

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